臨時例会議事録-第18回 異と和~違いが調和を紡ぐ時代へ~

令和8年11月1日、仙台奥羽ロータリークラブ11月臨時例会が開催されました。

組織運営の調律 ~観察の視点を広げる~
発表者:
 ファシリテーター:
・岩舘皓様(医療法人総志会)
・山本将人様(アッヴィ合同会社)
・宗像靖彦(医療法人総志会)

集会テーマ
• 組織の内側と境界に潜む「見えない気づき(Why)」を観察し、「How(対処)」へ急ぐ習慣を問い直しながら、多角的な視点を響き合わせて問題の本質を捉える対話のあり方。

集会全体を貫く問い
• 私たちはなぜ背景や理由(Why)、本来あるべき姿(What)、問題の所在(Where)を確かめる前に解決策(How)へと急いでしまうのか。組織の内外や職種の境界、時間の切迫や立場の違いによってどのような暗黙の気づきや少数派の声が取り残されており、それらをいかにして共鳴し合う知へと育てていくことができるだろうか。

第一部
主な視点
• 看護師、リハビリ職、介護士、ケアマネージャー、医師、メーカー・MR、サービス業など、立場や場面が異なれば捉える観察や視座(身体変化、日々の暮らし、機能、意向、制度・流通、予防など)も根本から異なる。
• 問題に直面した際、解決策(How)を急ぐ前に、なぜその状態に至ったのか(Why)や、本来あるべき姿(What)、問題の所在(Where)という文脈に立ち止まる姿勢の重要性。
• 単独で判断を進めるのではなく、リーダーや他職種と相談し、状態の捉え方や優先順位を整理し直すことで、判断を急がず確かめる機会が生まれる。
• 朝のミーティング、訪問診療時の報告、グループウェアによる議事録共有などの仕組みがある一方で、公式な会議では発言されず終了後の偶発的な少人数での会話(ミーティング・アフター・ミーティング:MATM)や個別面談で初めて表れる本質的な気づき(暗黙知)が存在する。
• 上司と部下の上下関係、部署間の距離、対面とオンラインの参加形態、多数派と同調圧力、緊急性と責任の重さ、若手の自己過小評価などが発言のしやすさに影響を与える。
• 医療現場における供給停止などの緊急事態では、単なる「サービス停止」とは異なり、患者の生命や生活の質(痛みコントロール)に直結するため、即応のHow先行になりやすい。
• 医療の外側(家庭での学校プリント等)にも共通して、How(持ち物などの指示)は境界を越えて届くが、Why(目的や背景)は手前に滞留するという構造的パターンが存在する。
• 障害として排除するのではなく「制約」として場のリアリティを捉え、ベテランによるファシリテーションや事前ネゴを通じて少数意見の通路を確保する試み。

印象的だった気付き
• 「同じ場にいること」と「考えを話せること」は同義ではない。会議で声が出なかったことを「意見がない」と受け取ってはならない。
• 食事を摂れない入居者に対して「何を買ってくるか」ではなく「どんな場面なら飲めているか」に目を向けたことで、生活習慣という新たな観察点が生まれた。
• 現場に届く情報は「やるべきこと(How)」の形を取りがちで、背景(Why)が抜け落ちたまま伝搬し、対処の連鎖が本質から離れていく。
• 「薬がない」は単なる現象であり、本質的な問題は「あるべき治療継続との差分」によって定義される。
• 制度・流通・処方様式(麻薬の様式変更や薬局間融通不可など)により、問題発生の場、影響が現れる場、報告が集まる場がそれぞれズレている。
• 「すぐ動く」ことは単なる能力ではなく、Whyの喪失を招く習慣でもある。「Whyを保持する勇気」こそが行動の質を担保する。
• 会議後に聞こえる声は、会議の不足を示すだけでなく、その人がどの関係性や場面なら語れるのかを知らせる重要なシグナルである。

この部で広がった世界認識
• 第一部では、介護や医療の現場を起点として、組織の内側で生まれる微細な観察と知の循環について深く掘り下げられた。入居者や患者の状態を理解することは単一の専門職の視線では完結せず、それぞれの職種が異なる場所から同じ対象を照らすことで初めて立体像を結ぶ。
• しかし、問題に直面すると私たちは最短距離の解決策(How)に飛びつきがちであり、公式な会議の場では責任の重さや関係性の非対称性、同調圧力によって「Why」や少数派の違和感がこぼれ落ちてしまう。Howは制度や職種の境界を容易に越えて流通するが、Whyは境界の手前に滞留しやすい。
• 「Whyを保持する勇気」を持ち、公式な枠組みの隙間にある雑談や会議後の小さな声に耳を澄ませることで、単なる情報の伝達を超えて、出来事の意味そのものを問い直す認識が広がった。

第二部
主な視点
• 組織の内側の観察から、組織と組織、立場と立場のあいだにある「境界(境目)」への視点の移行と補完。
• 同一の事象(医薬品の供給停止など)を前にした際、提供側(製薬企業・MR)が直感する「説明と謝罪・代替提案」というHow即応の視座と、受け手側(患者)が抱く実存的な「不安」という感情的視座の根本的な対比。
• 問題解決の4ステップ(What → Where → Why → How)の再提示と適用。What(本来あるべき姿とのギャップ)、Where(問題の所在の切り分け)、Why(背景・因果の探究)を経て初めて、比較・選択可能な良質なHowが立ち上がる。
• 組織内の会議と組織間の連携に共通する構造:結論(How)を急ぎ責任が前面化する場では自己防衛が働き発言が阻害されるが、「今日は聞く/結論を求めない」という場の前提が明示されるとマイノリティの視座が立ち上がりやすくなる。
• 日常生活における「何が足りないかから自らHowを育てる遊び」と、職場における「降りてくるHowを即時運用する緊張」の対照性。根拠や理由の薄い指示がストレスを生む構造。

印象的だった気付き
• トラブル発生時、提供者側の「責任・行動」と受け手側の「心理・感情」という意識の鮮やかな対比から、他者の位置へ視座をスライドさせる客観視が生まれる。
• 「なぜ(Why)」は単なる原因追及や言い訳の理由ではなく、他の選択肢(複数のHow)を拓くための因果を確かめる営みである。
• 1対1の信頼関係では意見が出やすいが、全体の場に信頼が橋渡しされていないと公の場での発言可能性が縮んでしまう。
• 日常生活でHowを立ち上げるプロセスに面白さや遊びを見出すことが、組織の緊張や即時運用への耐性を育てる。

この部で広がった世界認識
• 第二部では、第一部の「組織の内側の気づき」から視野が拡張され、組織間の「境界」や「場の前提設計」へと視点が補完された。同一の事象であっても、立場(医師、看護師、MR、患者、サービス業など)によって最初に立ち上がるステップや世界の風景が全く異なることが明らかになった。
• これらの視点のズレは対立ではなく、What・Where・Why・Howの連鎖として再配置されることで相互に補完し合う関係へと昇華された。また、発言のしやすさは個人の資質だけでなく、場の前提(結論を求めるのか、聞く場なのか)や責任の配分、信頼の構造に依存していることがプロセスとして理解された。
• さらに日常と仕事におけるHowの温度差を行き来することで、Howを単なる固定的手段ではなく、時間や関係性の中で柔軟に姿を変える生態として捉え直す視界が開かれた。

第三部
統合された視座
• 組織の内外を問わず、境界は制度や役割の線であると同時に、場の前提・責任・信頼の配列が織りなす心理的・関係的な線でもある。異なる立場が最初に立ち上げるステップ(看護師の生活視点、医師のプロセス視点、MRの実行視点、サービス業の予防視点など)は異なるが、What(本来像)・Where(所在)・Why(背景と意図)を丁寧に接続することで、Howは単発の対処療法を脱し、本来の姿に収束する。時間的切迫や制約が存在する場であっても、事前・事後の二層の通路や雑談の余白を設計することで、多声性と速度は両立しうる。

全体を通して見えてきた本質
• 現場の情報共有とは単なるデータやルールの伝達ではなく、言葉になりきらない違和感、経験、立場の違いが生む感情のグラデーションに耳を傾ける「観察と対話の営み」である。
• 情報がHowの形でしか流れない文化は背景(Why)を窒息させ、現場を行動の空回りへと追い込む。「Whyを保持する勇気」と「場の前提の再デザイン」が結びつくことで、Whyは境目を越えて循環する。
• ダンスにおいて振り付け(How)を間違えても作品の意図(What/Why)が共有されていれば表現が届くように、意図や背景が織り込まれて初めてHowは確かな成果と意味を持つ。

参加者が持ち帰る問い
• 会議や業務で語られなかった違和感や少数意見を、なかったことにせず拾い上げる通路をどう増設できるか。
• 受け取ったHowに対して、どのように立ち止まり、自らのWhyや本来あるべき姿(What)を差し込むことができるか。
• 自分の現場において、どの境目でWhyが滞っているか。解決の場と問題の場がずれているとき、誰に何をどう伝えれば連鎖がつながるか。
• 日常でのHow生成の遊びを、仕事の緊張や時間制約とどう接続し、自分自身の時間感覚を再設計できるか。

集会全体の流れ
• 2026年11月1日07:55:22に開始された集会は、介護現場での食事摂取における微細な気づきから静かに幕を開けた。「何を補うか(How)」ではなく「どんな場面なら飲めているか(Why)」へと立ち戻る介護士の視点が紹介され、公式な会議の枠組みから外れた終了後の少人数での雑談(MATM)や、個人の暗黙知が組織へ届くまでの見えない壁が共有された。
• 対話は続いて、医薬品の供給停止という具体的事象を契機に、組織の「境界」へと展開した。現場ではメーカーから医事課マネージャー、門前薬局、医師へと情報が流れる中で、起点・影響点・報告集積点のズレや制度的制約が浮き彫りになる。MRが即座に代替提案(How)へ動くのに対し、看護師は患者の痛み管理(What)を案じ、サービス業の参加者は予防の視点(Why)を投げかける。ここで「問題解決の4ステップ(What/Where/Why/How)」が提示され、各職種の視点が対立ではなく連鎖として整理されていった。
• 後半では、会議における責任の重みと同調圧力、発言資格の境界という構造的課題に光が当てられた。「結論を求めない/聞く」という場の前提の明示や、ベテランによる事前ネゴなど、速度の中に余白を確保する工夫が語られる。さらにダンサーの視点から「意図(Why)が共有されていれば、振り付け(How)が多少ズレても表現は伝わる」という比喩が持ち込まれ、日常のHow生成の遊びと仕事の緊迫のギャップを生きる知恵へと対話が深まった。
• 内側の微細な観察から外側の境界、そして日常と公の往復へと視座が広がり、参加者全員で「時間と関係の地形に沿ってHowを育てる」という統合的な思考の風景が紡ぎ出された。

今日生まれた「異」と「和」
• 異
 ・「薬がない・供給停止」は現象に過ぎず、問題とは「本来あるべき治療継続との差(What)」であるという問題設定の転換。
 ・供給停止という同一事象に対する、提供側の「責任と行動(説明・謝罪)」と受け手側の「心理と感情(不安)」の対比。
 ・ダンスの比喩による「意図(Why)と振り付け(How)」の関係性の可視化。
 ・境目を制度的な線だけでなく、「場の前提と責任の配列が作る心理的な線」として捉え直す視座。
 ・Howを固定的手段ではなく、「時間と関係の地形に応じて姿を変える生態」と捉え、会議外の声を持続的な資源とみなす価値観。

• 和
 ・解決策(How)へ急ぐ衝動を抑え、背景(Why)や本来像(What)を確かめ合うことが、結果として良質な複数案の比較・選択を生むという共鳴。
 ・職種や立場の違い(生活視点、プロセス視点、実行視点、予防視点など)は優劣ではなく、問題解決の連鎖を補完し合う関係であるという共通理解。
 ・仕組みや制度を整えるだけでは不十分であり、その隙間にある「言葉にならない気づき」や「偶発的な対話」をすくい上げる場のデザインの大切さへの合意。

一文で表す今回の集会
• 意図(Why)なきHowの連鎖を越えて、境界にこぼれ落ちる微細な声と多様な視座を織り込み、時間と関係の地形に沿って本質的な解決を育てる対話の旅。

CONTACT US

お気軽にお問合せください